☆☆☆

北林谷栄さん


 10月はそぼ降る雨で始まった。

 

 数日前、映画サイトで「にあんちゃん」(今村昌平監督・昭和34年)を見た。不景気風の吹く時期の佐賀県の炭坑を舞台に、そこで暮らす朝鮮人家族(今は在日コリアンとか表記されるが、この時代にはそのような呼び方はなかった)を描いた作品。  
 この映画は子供のころに見たはずだがほとんど記憶がなく、しかしながらタイトルだけは覚えていて、いったいどんな映画だったのかと見始めた。佐賀といっても唐津が舞台だが、たぶん当時の市教委あたりがご当地の映画だということで推奨したのではないかと思われる。  
 映画は一言で言えば貧しい時代のものであり、これでもかと次々に貧しい一家を襲う出来事が描かれている。ましてや斜陽産業だった炭坑が舞台とあれば是非もなし。あの頃、テレビは一般的な普及はまだまだ遠く、映画館で本編上映の前に必ずニュースが上映された。そのニュースで、怒鳴る男達とエプロン姿で練り歩く女性達の炭鉱争議の映像を度々見た。  
 「にあんちゃん」のキャストは、長門裕之、吉行和子、二谷英明、松尾嘉代、北林谷栄、小沢昭一、西村晃、殿山泰司、芦田伸介、穂積隆信、浜村純、山岡久乃、大滝秀治、北林谷栄、二谷英明と凄い顔ぶれで、どの方もその若さに目を見張ってしまう。その中でも一際異彩を放つのが北林谷栄さん。業突く張りの朝鮮人の老婆役で、演技とは思えないほどのリアリティを感じてしまう。  
 北林さんを最初に記憶したのが、姫路で小一の頃に見た「ビルマの竪琴」(市川崑監督・昭和31年)での物売りの老婆役。小学生には映画の内容などはっきり解るものでもなかったが、北林さんの演技だけは妙に記憶に残った。ま、特殊な能力をお持ちの女優さんだった。その後、テレビのトーク番組で北林さんをお見かけしたことがあって、役柄とは結びつかない上品な佇まいに驚かされた。ま、そりゃ、女優さんだから当たり前なんだが、落差は相当なものだった。  
 で、一番記憶に残っているのが伊藤雄之助さんが亡くなられた際に残された「ひた向きな方でした」とのコメント。旅立った死者に対する言葉としては深い賛辞のようにも思えたからだ。

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