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声喫茶


 今もあるようだが、西武新宿駅近くにあった歌声喫茶「ともしび」というところで仲間の一人がベーシストとして仕事をしていたことがあった。当然、大昔の話だ。そういう場所があることは知っていたが、よもや入ろうなどと思うことはなく、なにせみんなで肩組んで母さんの歌とかカチューシャとかを大声で歌うのだから、ちょっと恐ろしい気がしないでもなかったのだ。ある意味カルト的なイメージを持っていたとも言える。それで、怖いもの見たさというか、二度と経験できないであろうというか、ベーシストに一度店を覗かせてくれと頼んだのだ。「えっ、歌うのか、そうか、そうか、目覚めたか」ってなことを言われつつ、ある夜にお邪魔することになった。  
 盛況だった。立錐の余地もないとはあのこと。バンドは小さな本のような譜面を見つつ次から次へと伴奏をする。店にいる全員が大きな声で「むっすめさんっ、よく、きいーけよ、山男にゃ、ほーれーるなよお」とか歌うのを聞いて絶句しつつ、「なんという世界なんだ」と度肝を抜かれる夜は更け行くってなものだった。もちろん2、3曲聞いたあたりで「もういいいかな」と思ったのだけど途中で退席するわけにもいかず、きっちりワンステージ聞き終わることにはヘトヘトに疲れていた。あれは、歌ってはいるが、その、音楽をするとかいう行為じゃなくて、実にスポーツなんだと思えたのだ。音楽で汗を流すってなことだ。ま、狭い部屋でエコーがガンガンかかったマイクでがなるカラオケに比べればいくぶん健康的かもし

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