☆☆☆

夕涼み

 

 ウチの猫たちは夕刻になると姿を消す。どこに行ったのかと探してこの状況を初めて見たときは笑った。ここは風通りも良く涼しい。猫だって暑いのだ。それで、涼感を感知しているらしく、ここにべったりと寝そべるのが案配良いことを知ったようだ。もちろん下が熱を持っている時間はご存知らしく7時近い時間がベストらしい。床は汚れも見えようが、これでも二日に一度のペースでジャブジャブ洗ってはいるのだ。  

 またまた昔の話になるが、僕らのこどもの頃にはクーラーのある家などなかった。今はエアコンと言ったりするが、まだエアコンなどという呼び名がなかった時代。クーラーのない車だってビュンビュン走っていた時代だ。ちょうど今と同じころの夏休み。日が落ちて暗くなると食事を済ませたこどもたちはなんとなく表に出た。風呂上がりだったりして、夕刻の風は気持ちよく僕らを通り抜けた。まだ相手の顔がうっすらと見える時間。車がすれ違うには狭過ぎる道に僕らはなんとなく並んでしゃがみ込み、他愛のない話をした。あの時間が好きだった。いつも出てくる顔ぶれは決まっていて絶対に出てこない家もあったのだけど。  
 いくつか年下だったきよひろは一度「かろのうろんや」と言ってしまって、僕らの傍を通る度に「うろん、うろん、かろのうろん」とからかわれた。テレビのある家には近所の人が集まった。だいたいプロ野球の巨人戦が中継されていて、見ているおっちゃんたちの歓声が聞えることもあった。花火をやる日もあって、そういう時には大人も出て来た。町内の片隅は小さい祭りのような雰囲気になった。二度と戻れない時代。そんな時代があったのかと、幻だったのかと思えるような遠いむかし。  
 それは僕らの実に個人的な歴史であって、世の動きなどとはまったく関係ない。こういうことを思い出すのも歳を取ったせいで間違いないのだが、「ああ。あんなことがあった、こんなこともあった」と思い出せること自体がありがたい気もする。

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