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未練がましいこと


 オトコというものは以前の恋愛などを引きずるが、女性はスッパリ断ち切ってしまうと、サラリと忘れてしまうというようなことを聞く。何度もそんな話は聞いたから、概ね正しいに違いない。それは生き物としてのあり方の違いらしい。そんなものは忘れてしまったが、なぜそうなのかと詳しく聞いたこともあった。  
 鳥越俊太郎さんは、高校時代あたりに付き合っていたかどうかした女性のことがある日頭をよぎるようになり、その症状が尋常ではないと感じたらしい。それで、これは拙いってんで、わざわざ会いに出かけたそうだ。歳を取って若いころのことが突然フラッシュバックしたのか、拙いと気付くぐらいだから余程のことだったのだろう。会ってどうだったのかは語っておられなかったので知りようもない。  

 フーテンの寅さんシリーズに浅丘ルリ子さん扮するリリーが登場するものは4作あるが、その登場2回目のもう一方のゲストは船越英二さんだった。船越さんは役職につくサラリーマンだが、ある日家出をしてフラフラする内に寅さんと知りあってパパと呼ばれる。パパは小樽で、実は昔好きだった女性がこの町にいるんだと言い、会いに行くことになる。私が家出をしたのは、本当のところ彼女に会うためだったかも知れないなどと言い出すわけだ。  
 その様子を見ていたリリーが言う「いい歳して甘ったれだね、男なんて。だってっそうじゃないか。30年前の男が現れてどうのこうの言ったって、女にしてみれば迷惑な話だよ。陰気な伯父さんの面見てガッカリするだけじゃないの。」「はー、おまえも夢のない女だねえ」「夢じゃ食えないからね」  
 リリーさんは登場する度に珠玉のようなお言葉を残す。    

 おとこは甘ったれというかどこか現実離れしたことに憧れ続ける習性のようなものがあるらしい。学生時代に交際のあった女性に会いに行くことはなかったが、かなり歳を取ってからもその子の夢はよく見た。もちろん夢に登場する場合は、こちらの事情によって補正を重ねたものであるから大きく美化されていて、歳もまったく取らない。夢らしいといえば夢らしい最たるもの。その都合の良さが夢なのかもしれず、恋愛というほどのものに進展していなかった記憶というものはさまよい続けるものらしい。もちろん、おとこの場合。

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