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 小学生のころ、映画は全盛だった。娯楽の王様などといわれ、しかし他に選択肢のない時代だったから当然ではあった。もちろんラジオもあったし、僕らは毎日のようにラジオドラマを聞いていた。「赤同鈴之助」はあの時代の象徴のようなものだ。原作は漫画だったし、月刊漫画雑誌というものも僕らの時代の記憶としては欠かせない。「少年」「少年画報」「漫画王」「ぼくら」などなど。それも娯楽には違いなく、少年漫画も全盛時代だったといえる。  
 ラジオドラマは画面を想像しながら聞く。ま、ある程度は想像で賄えるが、画面を提供してくれる映画には到底敵うものではなかった。しかし、先の東京オリンピックが時代を変えた。  
 オリンピックを機にテレビが凄まじい勢いで普及した。日本中で毎日のように映画の疑似体験が行われることになった。今のテレビとは違い、むかしのテレビドラマはそれなりに力の入った創りのものが多く、しかもテレビはただ。タダより安いものはないということで、テレビに押された映画は日常からは少し遠ざかることになった。  

 1958年ごろが映画のピークだったらしい。映画館の数はスクリーン数で表すが、7500近かった。現在は3000ぐらいあるそうだが、1994年の1734を最低にして、それ以後は徐々に持ち直しているように見える。しかし、それはシネコンと言われる複合映画館が増えたせいで、決して映画館という建物がスクリーン数と同じように増えているわけではない。  

 僕が育った佐賀という町は一応県庁所在地だったが、どちらかといえば大人しい静かなところだった、その町にも「東映」『日活」「東宝」「松竹」「大映」と「新東宝」の邦画常設館があり、洋画も3館。それに少し古いものを流す2番館というものが何軒かあった。邦画のどの会社もが毎週二本の新作を送り込んでいたのだから、ま、黄金時代で間違いはない。

 
 ではあの頃、どういったものが上映されていたのか。ランキングの資料から見えてくるものがある。1950年代は時代劇が強い。いわゆるチャンバラ映画。どうして斬り合いのことをチャンバラなどと呼んだのかは分からない。ま、変な言葉だ。54年には「七人の侍」58年には「隠し砦の三悪人」と黒澤映画も絶好調。この時代の特徴は、なにかというと「忠臣蔵」が撮られたことだ。
 赤穂城・続赤穂城(1952年、東映)、赤穂義士(1954年、大映)赤穂浪士 天の巻・地の巻(1956年、東映京都)、大忠臣蔵(1957年、松竹)赤穂義士(1957年、東映)忠臣蔵(1958年、大映)忠臣蔵 暁の陣太鼓(1958年、松竹)、忠臣蔵 桜花の巻・菊花の巻(1959年、東映) 赤穂浪士(1961年、東映)、忠臣蔵 花の巻・雪の巻(1962年、東宝)  
 必ず当たる映画でもあったらしく、頻繁に作られていたことが分かる。  

 60年代も相変わらず時代劇が好調だが、ここである異変が起こる。1963年、鶴田浩二主演の「人生劇場 飛車角」がヒット。ここから東映の怒濤の仁侠映画路線が始まる。65年のランキングには二位から六位まで「網走番外地 北海篇」「関東果し状」「網走番外地 望郷篇 」「日本侠客伝 関東篇」「続・網走番外地」と仁侠映画がランク入りしている。  
 しかし、ま、あたしも嫌いではなかったが、ここらの10年ほど、日本人がヤクザ映画を盛んに見続けたことになるってのも妙な話には違いない。  
 この状況は70年代に入っても続き、「仁義なき闘い」シリーズへとなだれ込んでいく。その一角に割り込んできたのが「男はつらいよ」で、シリーズ8作目の「寅次郎恋歌」は71年の一位にランキングされている。70年代の後半からは年二作の両方共にランク入りする安定振りを見せた。  

 時を同じくして台頭してきたのが角川映画だった。 犬神家の一族(1976年)人間の証明(1977年)野性の証明(1978年)悪魔が来りて笛を吹く(1979年)蘇える金狼(1979年)戦国自衛隊(1979年)復活の日(1980年)野獣死すべし(1980年)スローなブギにしてくれ(1981年)魔界転生(1981年)悪霊島(1981年)セーラー服と機関銃(1981年)蒲田行進曲(1982年)汚れた英雄(1982年)探偵物語(1983年)時をかける少女(1983年)メイン・テーマ(1984年)麻雀放浪記(1984年)Wの悲劇(1984年)などなど。映画は見ていなくてもタイトルに聞き覚えがあるのは、大掛かりな宣伝の効果だったと思われる。  
 1984年には「ドラえもん のび太の魔界大冒険」が公開され、その後の映画の観客動員の特徴の一端が表れている。「キン肉マン」「キャプテン翼」「魔女の宅急便」と、今に続く傾向が顕著になっていく。90年代に入ると、この傾向はさらに加速して、「ドラゴンボールZ」が登場し、「ちびまる子ちゃん」「クレヨンしんちゃん 」「名探偵コナン」などが新たに参戦。宮崎駿作品も重要な位置を占め始める。歴代興行成績一位の「千と千尋の神隠し」が公開された2001年はランキングの半分をアニメが占めている。  

 昨年2013年のランキング上位は、1位「風立ちぬ」2位「ワンピース フィルム ゼット」3位「ドラえもん のび太のひみつ道具博物館」4位「名探偵コナン 絶海の探偵」となっていて、アニメは映画界の主流になったらしい。すでに俳優が必要ではない域に入っているようにも思える。50年代、オールスターキャストで大掛かりに「忠臣蔵」などと気張っていた映画界が、いつの間にか漫画映画主流のものに成り果てている、というか成り果てているという言いかたは良くないにしても、やはり他の言い方が見つからないようなものなのだ。そりゃ、もちろん、文化の低年齢化とか、そういった野暮なことは申しませんが。

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