☆☆☆

2018年



 今年も終わる。だれにも等しく過ぎていった時間の中に、それぞれの思いが残るわけだ。自分にとってこの1年はどうだったかというと、ライブ活動の状況が年々細くなって来た感もあり、それは同世代のお客さんが歳を食って足を運ばなくなったというのもあることはある。自分の演奏に対する考えは昔と変わらないが、新しいファンを獲得出来なかったってのは大きな問題に違いない。集客能力の低下などから、1月のライブを以て吉祥寺の小屋からは離れることになった。こう吹いてああ吹いてなどと、演奏に対する向きあい方は何十年も同じだが、ようするに不器用過ぎて他のことに頭が回らないのが良くないわけだ。春先からはまた新しい場所での活動になる。創作意欲はまだまだあるし、なんとかなるさ的に考えている。
 むかしからの仲間が一人また一人と消えていくのもショックだった。昨年の暮には高校時代からの友人をなくしたし、今年は20代の記憶から消えた人もいた。この数年で実に多くの仲間が姿を消した。自分の力ではどうすることも出来ない、大きな時間のうねりの中にいることを実感する。新しい出会いがあればいいなと願うようになった。

拍手[0回]

小学館


 僕と姉が預けられた姫路の家の、父の妹の連れ合いは刑務所の看守だった。決して広い家ではなかったし、いきなり九州からやって来た幼い姉弟との同居は迷惑だったに違いないが、つらく当たることもなく3年もの間接してくれた。特別に何か可愛がるというような事をするでもなく、どちらかといえば無口な人だったが、嬉しいことが一つだけあった。それは小学館の雑誌を毎月買ってきてくれることだった。発売日を知り、その日は叔父の帰りを心待ちにした。鞄の中にそれは入っていた。叔父は帰ってくると鞄を上がり口に置いたままにして食事を取ったりすることもあった。そんな時はジリジリと待つことになった。トイレに行く振りをして上がり口に置いたままの鞄の中を少し探り、雑誌のあることを確認してさらにジリジリした。やがて思い出したように叔父は鞄を持ってくるように言った。雑誌には付録が付いていた。豆知識の小雑誌だったり、厚紙で出来た簡単な組み立てのおもちゃだったり、ちょっとしたゲームだったり、とにかくワクワクする雑誌だった。小雑誌などは次の号が出るまでの間、繰り返し読むものだからだいたい諳んじてしまった。二才年上の姉のものまで読んでいたし、本を読む喜びはあの2年間で覚えた。



 九州に戻り両親と過ごすようになると、雑誌は毎月というわけにはいかず、毎年お正月が近くなると雑誌を一つだけ選んで買ってもらえることになった。12月号か1月号だったと思うが、付録には必ずと言っていいほど、クリスマス関連のものとかお正月関連のもの、すごろくとかカルタの類いのものが入っていた。どちらにしても他愛ないものだったが、クリスマス関連のものは異国の情緒を喚起する色彩のものが多く、何か特別なものとして植え付けられていった。あれは一種の洗脳のようなものだったと思う。

 母はクリスマスケーキを毎年のように買ってきた。今のようなクリームではなく、バタークリームのものだった。



 弟は今でもこのバタークリームのクリスマスケーキを探すらしい。一時は店頭にあることは滅多になく、苦労したという話も聞いた。僕ら姉弟にとってはクリスマスはバタークリームのケーキだったわけだ。なぜケーキなのかは知らないが、明日はケーキ屋に列ができ、ケンタッキーの鳥屋にも人が殺到するに違いない。

拍手[0回]

蒼ざめる



 今や全国至る所でイルミネーションというものが12月には欠かせないものになってきた。年々エスカレートしていて、アメリカのYahoo!検索でも先ず日本の写真が出てくる。もはや話には上らなくなったが、ノーベル賞を受けた日本人3人の発明した青色発光ダイオードが大きかったらしく、そこら中が蒼ざめた状態になっている。ま、どっちかというと寒々しい。加山雄三さんのツアーの打ち上げは加山さんの自宅で行なわれた。大広間に一流の寿司店が簡易出店をするなど呆れるほど贅沢なパーティだったが、御本人の自慢は庭にそびえ立つクリスマスツリーだった。当時は青色発光ダイオードなどなく、ツリーを飾るのは無数の豆電球だったのだけど、日本製は雨などに弱くてダメだったらしく、何千個かの電球をアメリカから取り寄せたのだと自慢話を聞かされた。ま、たいしたものだったのだけど。
 イルミネーションが海外では熱が入っていないかというとそうでもなく、パリのものは結構大掛かりで驚く。



 話は変わるが、今日、病院の待合室で本を読んでいて「えっ」と驚いたことがある。それは「袖振れ合うも(振り合うも)タショウの縁」というくだりだが、長い間、確かめることもなく「多少の縁」だと思っていた。多かれ少なかれ縁があるってなことだろうと勝手に思い込んでいたわけだ。本に書かれていたのは「他生の縁」だった。全然違うじゃん、とビックリしたのだ。他生は多生でもいいらしい。知ったからといって何も変わりはしないが、知らなかったことに驚いたってわけだ。

拍手[0回]

玄人



 暮だというのは分かってはいるが、歳のせいか実感はまったくない。十日もすればクリスマスになるけど、分かってはいてもやはり歳のせいか実感はない。新年たって、もし蝋燭だとすれば年々短くなっていく残りの時間が目に見えて減るわけだからありがたい筈もない。
 何年か前、素人を何人か起用したテレビ番組があった。素人も素人、「ズブの」付きの一般人だった。魅力などないし、あえて最もフツーの人、それも目立ちようのない人を選んでいたようだった。そのギャップを面白いとしていたわけだ。それが何年続いたかは知らないが終了することになった。毎週レギュラーで出ていた素人タレントは、何を勘違いしたかお笑い芸人として残りたいと考えるようになっていた。そりゃあ、ま、テレビに出演していることに慣れ、自分はこのまま生きていけると思ったに違いない。そこで付け焼き刃的に芸人としての修業を少しだけ積み、皆の前で披露して番組の中で裁可を仰ぐことになった。もちろん結果は分かり切ったことだがダメだった。その一部始終を見ていたわけではないが、勘違いを仕向けたのも番組そのものだったし、ずいぶん罪作りなことをするなと気の毒になった。
 10年以上前、生の音楽番組にある歌手のホーンズの助っ人の形で出た。待っている間、楽屋のスピーカーから聞こえてくるのは、音声マイクの拾う歌手の声だけだった。いわゆるカラオケも聞こえないし、歌だけがア・カペラで聞こえてくるのだ。これには度肝を抜かれた。少年アイドルグループの歌が最も悲惨だった。もうプロとかアマチュアを超えて学芸会以前の代物だった。ほんと笑う気も失せるほどで情けなくなった。とりあえず音楽番組だったよなあと確認したい気分になった。そりゃあ、アイドルというものはいわゆるセクシュアルなアピールを一儀にするものであって、それを商品とする商売だからいいかも知れないけど、なにも音楽をその道具にすることはないじゃないかってなものだった。しかしながら、コンサートで多くの人を集めて商売するものだから、ステージでショーを行なうのが手っ取り早いということなんだろうと、またまた情けなくなった。もちろん、そのような形は日本だけではない。むかしモンキーズというグループがいて、ビートルズにあやかって売り出しそこそこに売れたようだが、彼らはろくに演奏も出来なかったらしい。一時大ブレイクしたベイ・シティ・ローラーズも似たようなものだったと聞いた。ステージは口パクで行い、念の入ったことに曲間でチューニングの真似事をしたりするところが欧米のショービジネスだと感心されたりしていた。
 一時は日本の歌謡界を席巻した小室氏はミュージシャン内ではとても評判が悪かった。まったく興味がなかったから聴いたものをまったく覚えちゃいないが、あるピアニストは、転調の仕方も知らない素人で胸くそ悪いとまで言った。しかし、そのプロ内で評判の悪かった彼は違った魅力を持っていたのか、やたらと売れまくっていて、それも件のピアニストの神経を逆なですることになっていたようだった。

 昭和30年代の、例の紅白歌合戦というものを観ることが出来たりするが、ザ・ピーナッツや江利チエミだの美空ひばりさんだのがいるころのステージというものは、どこからどう聴いてもプロの集団のショーであり大したものだったと感心するのだ。素人臭さが魅力になり得ることもあるけど、やはり・・・そのプロというものが前線の一番前に立っていないと拙いのではないかと思う。

拍手[1回]

暖房



 格安のホットカーペットを店頭で見かけ、思わず手が出てしまった。猫たちにはそれぞれに専用の小さいものがあるわけだが、敷いた途端にこのありさま。「なかなか気が利くじゃん」ってなものだろうか。我が物顔で二名に座られ、飼い主の座る場所はなし。冬が苦手で慣れることがない。以前、冬の最中に友人の家に遊びに行った。暖房事情が家によって異なることを初めて知った。小さいものがあるにはあったが、がんがんストーブを焚くでもなくなく、夫婦揃って厚着のうえに厚着を重ね、二人ともだるまのように膨れていた。訪ねたこちらとしては暖房もあるだろうからとジャケットを脱いでいたわけだが、なんだか寒くなってきて、マフラーまではしなかったけどジャケットを再び着ることになった。暖房費節約かなにかは分からないが、それがその家の流儀らしく、途中から早く帰りたいとそればかり思っていた。なにせ、家の中では薄着で過ごす程度に温めているのが通常だったから、カルチャーショックに近かった。家の中でこういう風だったら、彼らが外出するときはどうするのだろうと不思議に思ったものだ。で、うちのねこが言う。「ニャオーン、こりゃあ案配いいや」

拍手[0回]

カレンダー

12 2019/01 02
S M T W T F S
3 5
8 11 12
15 17 18 19
21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

最新記事

(01/20)
(01/16)
(01/14)
(01/13)
(01/10)
(01/09)
(01/07)
(01/06)

アーカイブ

最新コメント

[12/10 s・f]
[09/26 s・f]
[09/26 ぐれじゅー]