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老いること


 すっかり歳を取ったパスタ。今日は一大決心をして何年ぶりかで洗うことにした。ちかごろ毛並みが悪くなっていて、フケのようなものも見えるし、艶は失われた。これは内臓とか口腔内の疾患などが影響するという。洗うにしても外見だけがマシになる程度で根本的な解決にはならないが、少しでも気分よくなればとの親心であって、断行するには一大決心というものが必要になる。なにしろ、ただでさえヒステリックになりやすい猫だ。あちこち引っ掻かれるのは覚悟しなければならない。まあ大変だった。迅速に行なうしかないわけで、終わりのあたりで引っ掻かれて傷になった。そう念入りに出来ないから行水させただけの体になった。



 加齢と共に体にガタが来るのは人と同じで、歯槽膿漏気味だったりもする。その手術を検討したこともあったが、手術に至るまでに何度も通院して入念な事前の検査の末に、どの程度の麻酔が適度かとかを考えるなどと悠長なことを言う。そんな検査に耐えられるとは思えないし、老猫に苦行を強いるのも躊躇われ、うがい薬のようなものを調達して自宅でケアすることにした。口が臭くなって一時は顔を背けるような案配になっていたが、最近は匂いが軽減したからいくらか効果はあるらしい。仔猫のころは歯磨きも励行していたが、次第に嫌がるようになり、マジモードで激昂するようになって止めた。



 なにせ17才だ。老猫だから腫物にさわるように気を使う。食欲は衰えないから今日明日ではないにしても、少々の覚悟は必要な気がしていくらか気が重い。

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寝床



 今年の薔薇もそろそろ見納めらしい。


 しかしながら、おっちゃんとしては次の手をちゃんと用意していて、薔薇の花の間から出番を待つ紫陽花が見える。抜かりないなあってなものなのだ。



 一ヶ月ほど前、ねこ共のために新しい寝床を買ってきた。冬の間はホットマットの上にしかいないわけだが、さすがに暖かくなってくれば電源は落とす。それでもマットの上に寝転がっているから、ちゃんとした寝床を与えようと思ったわけだ。



 みかんは見るや否や入り、お気に入りの場所になった。ところが、パスタ様の方は気に入らないらしい。ねこの大きさに合わせて2種類買ってきたが、その大きさの違いが気に入らないのか「ほら、ここで寝んだよ」と入れてもすぐ出てしまい、マットの上に戻る。「ええい、むつかしい猫め」ってなものだ。ところが、ところがだ。こないだ、父ちゃん指定席の大きなクッションのカバーを洗うために中を出していた。その肌触りが心地良いのか、大きさが自分にピッタリだと思っているのか、寝転がってご満悦の体。しばらくは離れず、父ちゃんは居場所を無くしてしまったのだ。「この潤沢な有り様ってものがあたしにピッタリなのよねえ」と言っているのかもしれない。

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あたし、ごはん食べました?


 財務省次官のアホな音声が世に出てしまった。万事休す。普段からあのようなことを悪ふざけで言う人だったのかどうかは分からないが、録音されているとは本人もビックリだったに違いない。
 偉そうにふんぞり返った人生はこれを以て終了ってな話になってしまい、家族はやりきれないだろうし、ま、気の毒なことなのだ。

 写真は若いころの猫ども。みかんなどはほとんど一日中外で過ごし、飯時にだけ帰ってきていた。外出するといっても、猫の行動範囲は広くとも半径50メートル程度。






 主な遊び場は家のすぐ前のビルの一階部分の駐車場だった。車が8台置けるスペースだった。2階部分はアパートになっていて、3階に大家のおばさんが住んでいた。歳の離れたご主人が老後のためにと建ててくれたと聞いたことがあった。四部屋ほどのアパートと駐車場の上がりだけで食っていけるだろうという心遣いだったらしい。ちなみに駐車場の賃貸料は月3万円強だった。とても育ちのいいお嬢様のような方だった。その人柄が敷地にも出ていたのか、ホンワカした佇まいの駐車場が猫たちのくつろぎの場所になった。車がやっと通れるような道を挟んですぐの場所だったから、こいつ等にしてみれば隣の部屋に行くような気分だったに違いない。今は、2つの広いベランダがあるから外出気分を味わえると言えないこともないが、以前のような散歩気分にはなれないだろうと申しわけなく思っているのだ。しかしだ、少々の無理は聞いてあげようという気になっているのに、最近の2名のわがままぶりには時々ムッとする。歳のせいかもしれない。「えっ、おばあちゃんさっき食べたでしょう?」というようなやり取りが毎日のように交わされるのだ。今日も15日分の食料買い出しに行ってきた。パスタはおやつのような位置づけで売られているものがお気に入りなのだが、さすがにそれは主食には無理がある。それで、絶対食ってもらえないものが何かを把握した上で、「これは食べなかったな、これはまあ食べるな」という具合に売り場で散々悩んで買ってくるわけだ。もちろんおやつ的なそれも一日一つというような計算で買ってくる。ところが、買ってきたことを知っているらしく、他のものにそっぽを向き、「あれを出せ、あれを」と猫なで声で、この場合は父ちゃんなで声でかなりしつこく要求して聞かないのだ。少し前にしょうがねえなあと再度与えたりしたのが失敗だった。皿に入れたものを前に懇々と言い聞かせるのだが、なかなか言うことを聞かず、今日は出ないなとあきらめるまで攻防は続くのだ。あきらめた後はどうするかというと、ちゃんと出されたものを召し上がるという展開で、朝起きると皿の中は空っぽになっている。よし、いいぞ、いいぞってんでまたおやつ的なものを差し出してしまうところがこっちもバカなんだけど、猫にいいような操られているような気もしてくる。しかも、学習したらしく、それを見ていた弟分のみかんまでが同じルーティーンで攻めてくるのだ。

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ぱすた17才



 車のリアウィンドウに花弁が積もり、桜も終わりに近付いたらしい。
 今日、4月1日は恒例の、というか勝手に決めているだけだが、パスタの日ということになっている。パスタが家にやって来て17年経った。


 すっかりおばあさんになってしまった。今年の冬は置いた場所が良かったのか、ホットマットの上がお気に入りの定位置で、日がな一日ここで過ごしていた。ベッドに飛び乗って布団の中に入って来なくなった。



 しかしながら、パスタの代わりにみかんが飛び乗ってくるようになった。みかんの場合、足元から来るとかはせず、必ず胸の上を通るということになっているらしく、突然よじ登られて驚くこともしばしば。



 一才に満たぬころ、パスタは構って欲しいものだから、いつも傍にいた。パソコンに向かえば、モニターの上から「いつ終わるの?」とでもいう風に顔を出して、遊ぶことをせがんだ。


 
 寝る場所は高い位置に作られたベッドだった。ここからだと部屋全体が見渡せて都合が良かったらしい。



 そんな平和な日常に現れたのがみかんだった。パスタ一才と二ヶ月の時だ。左の茶色のかたまりが「みかん」。



 このころは気になっていたようで、椅子の上から覗き込むように見ていた。でかくなっていくみかんに不満はあったかもしれないが、小競り合いを続けつつ16年は一緒に生活できている。



 人間の歳に換算すると、などとねこの歳を言うが、あんなに当てにならない例えはない。動物としての機能がまったく違うものを比較しても仕方がないのだ。だが、パスタもみかんもそうだが、我が家が老齢家族になっていることは確かであって否定のしようもない。これから先はとにかくいい形で全うするべく肩を寄せ合って生きていくわけだ。ゆめゆめ自分が先に逝ってこいつ等を残すことだけは避けたいと願うものなのだ。

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鉤裂き


 朝はパジャマ姿のまま、淹れ立てのコーヒーを大きなクッションに座ってボーッとしつつ飲むってのが定番。それまではTシャツなどでお茶を濁していたわけだが.、入院生活を機にパジャマはすっかり必需品となった。何も予定がなければ午前中はパジャマ姿のままで過ごすこともある。しかしながら家には猫がいる。無傷で済むわけもなく、だいたいあちこち鉤裂きだらけ。中にはとてもじゃないが人前で着るのも憚られる、お前はホームレスかってなものも二、三。



 今朝も突然膝に飛び乗ってパスタが食事後のペロペロの儀式を始めた。後ろ足は爪先立つような体勢。「おまえね、そんな無理な姿勢でやらなくてもさ」と言ってはみるが、このような場合無理に動かそうとすると大層な剣幕でお怒りになる。ねこは自分の非を指摘されることを極端に嫌うようで、無理であろうとなかろうと自分の方針を曲げないのだ。それで、パスタが気の済むまで我慢をすることになる。このような状態でまた一つ鉤裂きが増えるわけだ。
 以前、それまで買うことのなかったユニクロで、初めて薄手のセーターを買った。家に戻り袋から取り出して試着した瞬間、パスタがピョンと気軽にしがみついてきた。ヤな音がしてセーターはいとも簡単にほつれた。「げっ」だった。結局着ることもなく捨てることになった。それ以来ユニクロで買い物はしていない。もちろん商品に問題があったわけではないが、なんとなくケチが付いた験の悪いものになってしまったのだ。

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