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台風の日


 台風で関空が大変な事になった。滑走路水浸しは予想されたことだったかも知れないが、タンカーが橋に衝突して破損した。写真で見る限り、橋そのものが歪んでしまっているし復旧には何ヶ月もかかると思われる。関空を利用したことは数えるほどしかない。和歌山方面に行くのには便利だが、大阪市内から遠過ぎる。乗るまでの時間などを考えると新幹線を選んでしまう。なんでこんな所に造ったんだろうという声が多いらしい。



 小学生のころ住んでいたのは、一軒家の二階部分の借間だった。父が呉服屋の経営に失敗して立ち行かなくなり、しばらくは親と離れていたのだけど、やっと呼び戻すことができるようになって借りたのが佐賀の町の借間だった。一階部分が大家の家族で、5人姉弟を養っている戦争寡婦の女主人は女傑だった。5人のうち、関西に就職していた長兄は後に戻ってきた。下に6人、上に5人の大所帯だった。家は古かった。中が剥き出しになりつつある壁もあった。台風の日、母は揺れると言って怖がった。実際揺れていたかどうかは分からないのだが、母は揺れていると何度も言った。同学年の子供がいたこともあって、この部屋での5年ほどはストレスが多く、そういった意味ではいつも揺れているようなものだった。
 姫路の叔母さんの家にいるころは、姉弟で居候していることでいつも気兼ねがあったし、我慢は多かった。父の弟の叔父さんが訪ねてくるのが楽しみのひとつだった。優しい人だったから遠慮なく甘えることができた。今度来たときは映画に連れていってやると約束していたが、来たのは台風の日だった。もちろん台風直撃の最中ではなく通り過ぎてしばらくしたころだったが、映画館そのものが開いているかどうか分からなかった。嫌がる叔父さんを約束だ約束だと説き伏せて街に出るには出たのだけど、案の定映画館は休業だった。台風の後で疲れ切ったような街を歩き回り、諦めようとしたときに、開いている映画館が1館見つかった。映画は「母」というタイトルで三益愛子、川口浩、船越英二、京マチ子、志村喬などが出演しているもの。出演者は調べたから分かったものの見た後に記憶に残ったのは、川口浩さんだけだった。興味の湧くような映画でもなかったが、あの時は何でもよかった。ようするに甘えることのできる叔父さんと一緒の時間が大切だったような気がする。

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思ったより多かった曲ども


 大型台風接近中でテレビは物々しく状況を伝える毎度のパターンだが、強風の現場に赴いて倒れそうになりながら中継する毎与太も相変わらず。



 古い楽曲のデータの主だったところは揃ったようだが、見落としがあるかも知れないとファイルをさらに調べている。大石氏の言う100曲には届いていないようだが、少なくとも演奏可能なものは優に50曲を超えている。お蔵入りしたものを含めると70曲ぐらいがあるわけだ。録音用にエディットを始めたものが35曲。唸りながら気の遠くなるような作業が続く。電話で自主制作でもレコーディングするべきだと言われたときは、考えたこともなかったから虚を衝かれた案配できょとんとした。もごもごしながら「ま、あっ、その検討してみる」と応えたわけだが、作業を始めてみると奥が深い。言われなければむかしの楽曲のデータを引っ張り出すこともなかったに違いない。楽曲はライブで消費されて消えていくものという感覚でしかなかった。飽きれば次を作るってな調子だった。それが一転して、世に問うというほどのものではないにしても作品として残すことは案外悪くないと思い始めたのだ。ひと昔前は自主制作のレコードなど手売りが基本だったし、大手の販売ルートに乗らない限り泡沫に近かった。時代は変わった。今やAmazonなどが委託販売を引き受けるようになったし、iTunesも僅かな手数料で配信可能だ。
 などと取らぬ狸の何とやらで夢ばかり膨らんでしまうわけだが、その前に大変な作業を終わらせなきゃと、奮い立たせながらも現実に戻ることを行きつ戻りつしている。

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失せ物


 とんでもなく早い梅雨明けから長い夏が始まり、暑い暑いと言ってるうちに9月だ。秋が来る。



 このところ半日はヘッドホンをしているわけだが、ゼンハイザーの密閉形のヘッドホンは締めつけがしっかりし過ぎなのか、3時間を過ぎる辺りから必ず耳が痛くなる。僕らは仕事柄それなりに奮発して良いヘッドホンを買ったりするわけだが、ヘッドホンには苦い思い出がある。まだ20代のころ、無理をして値段の高いヘッドホンを買った。折り畳むと小さくなるし、旅先などに持っていくのも都合が良い。買った日は渋谷でライブがあった。大きなライブハウスだったが、あれがどこだったのかはすでに思い出せないし、もう無くなっているかも知れない。「おっ、いいの買ったなあ」などとメンバーに言われ得意満面だった。カセットデンスケに入れたテープを聴きながら開演を待った。ライブは無事終了して帰宅。家に辿り着きしばらくして「あっ、ヘッドホン」と気付いたのだ。ライブでテンションが上がっていて、買ったことすら忘れていた。楽屋に袋ごと忘れてきたらしい。次の日、早々にライブハウスに赴き忘れ物の届け出の有無を訊いた。出て来なかった。楽屋に出入りする人は多い。泣く泣く諦めるしかなかった。
 バンドの楽屋とか、リハーサルスタジオでの忘れ物が出てくることは滅多にない。だいたい誰かに持ち去られてしまうのだ。中野のリハーサルスタジオには個人練習で毎日のように通った時期がある。当時ウチのバンドを手伝ってくれていた女性ドラマーも常連だった。ある日、スタジオにメトロノームを忘れてきた。次の日、当然届けられていると思ってスタッフに聞くと「さあ?」などと言う。ドラマーの臼井さんにそれを話すと「いやあ、出て来ないっすよ」と事も無げに言われた。彼女の場合はドラムだからメトロノームは必需品。今まで何コ無くしたか分からないと言うのだ。忘れてきた時点であきらめるしかないという。ああそうかと納得したわけだが、選別したリードをベースアンプの上に忘れてきたときは、「大事そうに並べてあったから」という理由でカウンターに届けられていた。誰でも使えるものではないから出て来たらしく、苦笑いするしかなかったのだ。

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体操




 だいたい4年に一度のオリンピックでしか見ないわけだが、体操競技ほど妙なものはない。どの種目もそんな無茶なというような動きばかり。平均台の上で宙返りなどは普通に考えれば正気の沙汰ではない。しかしながらその狂気の沙汰とでもいうものを「ま、これが普通でんねん」ってな顔をして平然とやってのけるところが味噌らしい。



 動きは何にせよ真っ直ぐということが尊ばれる。垂直、水平が理想とされているわけだ。並々ならぬ訓練の果てに、限られた人だけが辿り着けるのがメダル獲得というゴールだ。現役時代にそのような栄誉を授かった限られた方々は、引退すると何とか協会というところに所属して後進の指導に携わるというか、時によっては自分のテリトリーを広げて名誉欲を満足させる甘い汁も吸いたくなるものらしい。まだ18才の選手の告発によって怪しげな動きが露見し、体操協会まっ青。70の爺さんが何をやってんだかという話だ。定年を迎えた世代のほとんどが暇を持て余すと言う。たぶんパワハラをしたとされる方も、ようするに暇なんだな。若い有望選手を見ては何とか自分の配下にして手柄を増やそうなどと考えているに違いない。70才といえば老い先は長くない。それでもまだ権力というものに惹かれ続けているのが痛ましいというか、真っ直ぐでないところが情けなくもあるわけだ。

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継続


 さて着々というか遅々としてというか、自作曲データの掘り起こし作業は続いている。PCのデスクトップには楽曲のファイルが並ぶ。デスクトップの写真が猫というところは猫バカの所以でもあってお笑いくださいってなものだ。現在未発表のものは14曲で、日々増え続けている。



 15年ほど前に出したアルバムでは10曲を録音した。その際に洩れたものも今回見直そうというのだから大変なのだ。作ったのは20年も前なのに、バンドで演奏する楽曲としては難しいということでお蔵入りしていたものも多い。プログラミングで土台を作るということであれば、それらも全て日の目を浴びる余地がある。いいぞ、いいぞ的に作業は進んでいる。バンドを始めたときから現在まで、曲を作るということは常に懸案事項であり、それが自分を前に進める源だったように思う。それで、録音して発表する当てなどなくとも作り続けた。1、2度の演奏でやらなくなった曲もかなりの数に上る。曲が気に入らないのではなく、次に作るものに興味が向いていたのだ。曲を作った時点で自分の中では終わっていたとも言える。演奏で掘り下げることをせずに次に移っていくというのもせっかちな話だが、20年間ほとんどそうだった。20年間分だ。次から次に出てくる曲の数々、すっかり忘れていた7拍子のもの、編成が大きくなってしまっているもの、それらを見直す作業は大変だが、ま、・・楽しい。薬物中毒で更生施設に入り、出所後には演奏される当てがないのに曲を作り続けたタッド・ダメロンのことを、比べるの大それたことだとは分かっていても考えたりする。20年間以上作り続けてきたわけだが、その都度は日常的な作業だった。しかし、多くの楽曲のデータを目の前にして、継続は力ということは本当だなとつくづく実感している。

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