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食の変化


「あたしゃ、朝飯にみそ汁さえあればいい派だから」ってな言葉を聞くことがある。異論はなく、自分もそれに該当すると思っている。ごはんとみそ汁とお新香、それに納豆でもあれば充分なのだ。それには合わないものだが、コーヒー派だからお茶を飲む習慣はない。山田洋次監督の時代劇を観ると、お茶ではなく白湯を飲むシーンがある。昔の人は食事の後に白湯を飲んでいたらしい。
 さて、みそ汁だ。塩分のこともあり、そう頻繁ではないが、むやみに食べたくなるときがあって、主に揚げと豆腐のみそ汁を作る。



 減塩味噌だし、幾分甘めのものになってしまうが、それでも出来立てのみそ汁には得も言われぬ吸引力があってホクホクとした気分で頂く。これと御飯だけでもいいぐらいだ。ただ惜しむらくは豆腐だ。子供のころに食していた豆腐は、スーパーで売られているパッケージものではなく。毎朝豆腐屋が自転車で売りにきていたものだった。荷台に豆腐の入った箱を括りつけ、プワー、プワ、プワー、プワッ、とラッパを鳴らしながら町を走った。思い出してみると、あの箱の中には水が入っていたし、相当重かっただろうから自転車を漕ぐのだって大変だったはずだ。なんとなくフラフラと走っていたように見えた記憶がある。誰もが鍋などを持ってその豆腐屋を呼び止め、豆腐を買った。パッケージ化された豆腐は何日も冷蔵庫に入っていることがあるが、あの豆腐屋から買う豆腐は保存するものではなく、今か、少なくとも当日中に食べるものだった。大豆の風味が口の中に広がる美味い豆腐だった。製造過程に詳しいわけではないが、にがりの使用などが関係しているらしい。日持ちのいいパッケージの豆腐だが、美味さでは昔の豆腐に遠く及ばないような気がする。ま、それはトマトにしても昔の風味は失われているわけで、いわゆるお年寄りに近い方々にしてみれば、今は何を食するにしても昔の味の何割引きかで味わっていることになる。

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トマト、トマト


 こんなに早く梅雨明けしてこの先どうなるんだろう的展開だが、この暑さでは夏休みだって前倒しするべきだと思ったりする次第。さて、この時期はトマトだ。JAの直売所で山ほどトマトを買ってくる。緑黄色野菜の摂取を心がけていて、栄養士に言わせればトマトはその成分がギリギリの線らしいが、とりあえず夏はトマトということになっているのだ。



 直売所の野菜のほとんどは生産者の名前が書かれている。茨木産だとか長野産と表記されているものもあるが、地元産のものは全部生産者の名入りでの販売。以前はその名前などあまり気にしてはいなかったが、一昨年の冬、ある生産者のトマトがまるでフルーツトマトのような甘味があることに気付いた。2月一杯ぐらいで棚から消えてしまうが、美味しいので見かけたら即ゲットってな案配だった。ネット販売も好調で売れ行きがいいらしく、今年は販売所では見かけなかった。しかし、6月ごろある生産者のトマトがそれに負けず劣らず美味いことが分かった。全体に小振りで人気はなかったようだが、これに気付いてからというものはこの生産者のトマトを優先して買うようになった。トマトは種類も多く「桃太郎」などが有名だが、この方のものは「麗旬」というらしい。酸味は弱く、ほのかな甘味が特徴でもあって、特に出始めのころのコリコリとした食感のものは秀逸だった。同じ品種の他の生産者のものも買ってみたが、同じとは行かず、生産過程に何か独自の工夫でもあるらしい。小振りとは言え、一玉が150グラムほどはあって、一日3コで450と一日の野菜摂取目標300グラムは、トマトだけでも軽くクリアするわけでありがたいのだ。

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牛丼並


 コンビニに行くことは滅多にない。ずいぶん前にコンビニの弁当の危険性を散々聞かされたこともあるし、品揃えが通り一遍の安易さで、文具や本などの専門店を隅に追いやった元凶のようなイメージが付きまとっていたことにもよる。東中野に古くから続いていた書店は、コンビニの台頭と共にやっていけなくなって閉店した。店主によれば、町の書店で売り上げに期待できるものの筆頭は、単行本や文庫本ではなく週刊誌だったらしい。駅の売店しかなかった時代はともかく、コンビニが現れてその売り上げが落ちたそうだ。もちろん、単行本や月刊誌なども売れてはいたが、書店を維持するために週刊誌の売り上げに負うところが大きかったわけだ。
 文具にしてもたいしたものは置いてなくて必要最低限のレベルだが、日常生活ではそれで事足りるもので、町から文具店を追い払ってしまった。それはスーパーが魚屋や野菜屋、肉屋などを追いやった構図と似たようなものだ。どの町にもあったそれらの店は激減した。


 
 しかし、珍しく今日コンビニに入って食関連の品揃えの豊富さに驚いた。弁当はもちろん、サラダや惣菜の種類の多さ。企業努力で進化し続けていることに感心したのだ。埃まみれになっているかと思われる「おでん」の時代から惣菜に力を入れる時代に変わってきているらしい。このままでいけば、その内店内で握る寿司なども販売することになるような気さえしたのだ。
 こんな店が昔あってくれればよかったのにってな感じだ。僕らが20代のころ、コンビニはまだ珍しいものでしかなかった。二十歳の頃、夜中に腹が減ると近所の飲み屋におにぎりを作ってもらっていたくらいだ。当然、たばこの自販機もジュースの自販機も限られた場所にしかなかった。コーラの自販機が近所に出来た時には、飲みたくもないのにわざわざ買いに行ったりした。
 まるで化石時代だった。20代の半ばを過ぎて、参加したバンドでの旅の仕事が増えた。その頃の僕らを支えてくれたのは「吉野家」だった。仕事が終わって町に繰り出すのは深夜近かったし、開いている飲食店は限られていて、なにしろ僕らは裕福ではなかった。関西には「王将」と「珉珉」という餃子の中華店があって、そのリーズナブルな値段も心強い身方だった。
 やがて歳を取り、地方公演の後は主催側の宴会なども増えた。その頃はコンビニがどこの町でものさばっていたのだけど、コンビニで買うのは飲み物類だけだった。
 吉野家に通っていたあの当時に、今のようなコンビニがあれば食生活も変化があっただろうにと残念な気もしつつ、毎晩のように牛丼をパクついていたあの頃が少々切なく愛おしいものに思えたりもするわけだ。

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閉店


 ある日忽然と姿を消す飲食店というものがある。30年くらい前だったか渋谷にあったカレーの「ボルツ」は仲間内でも評判の店で、辛さが2倍とか3倍とか、果てには30倍というものもあった。どんな味だったかはっきりと覚えているものでもないが、ずいぶん経って訪れると無くなっていて本当にガッカリした。池袋の駅地下にあった立ち食いの店が集合する「すなっくらんど」も忽然と姿を消した。裏口付近に美味しいうどん屋があってお気に入りだった。店内にはラーメン、焼きそば、蕎麦、カレーなどなど手軽な食べ物の店が所狭しとひしめき合っていて、いつも盛況だった。ネットで検索するとイメージに最も近い写真が見つかったので転載。

 

 渋谷には「福ちゃん」という九州ラーメンの店があった。ここにもよく行った。麺は少し違ったけども、博多ラーメンとしては上出来の店で博多在住の頃の味を思い出させてくれた。ずいぶん前にNHKでの仕事があり、その日は帰りに福ちゃんラーメンに寄ることが大きな目的になっていた。行くときは歩く距離が近い代々木八幡からスタジオに向かった。さて、仕事が終わった帰り、口の中はすでにラーメンを期待しつつワクワクしていたわけだ。渋谷駅に向かう道を歩いていたのだが、いつの間にか福ちゃんを通り過ぎてしまったらしい。あわてて戻ってみたが、店がない。2度3度と繰り返して、やっと店が消えたことに気付くことになった。ガックリ肩を落とし、近辺のラーメン屋で何かを喰ったが、口の中の期待は見事に裏切られ肩を落としたままの帰宅となった。ま、食い物の恨みに近い。

 

 中野のブロードウェイ下の入り組んだ商店街の中にもお気に入りの中華屋「大門「があった。通路沿いにあるカウンターだけの店だ。ラーメン、炒飯などの中華も美味しかったが、ここでのお気に入りは「ショウガ焼き定食」だった。600円とお安かったしボリュームも満点。先日、久し振りに食べようってんで店に向かった。路地を曲がると店が見えてくるはずだが、どうも様子が違う。うどん屋になっていた。近所の店のおばあさんに訊いた。「あの中華屋は?」「秋ごろに閉めちゃったんですよお」「えっ、移転とかじゃなくて?」「いやいや、そのね、なんでもねご主人が鍋を振れなくなっちゃったとかでね」「あらまあ、好きだったのに・・・」



 この店は近所で働く人たちもよく来ていたし、残念に思っている人は大勢いらっしゃると思われる。時代が変わるとは言うけれど、そうやってある人材がリタイアすることで変わることを余儀なくされることもあるのだとシミジミとしたのだ。東中野のステーキハウス「ジェロニモ」が、親父さん亡き後娘さんに引き継がれたことは稀有な例に違いない。

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高騰野菜


 野菜が高い。目が飛び出るほど高い。緑黄色野菜を一日300グラム以上食べること、などと仰せつかっている健康維持積極的推進者としては困った事態なのだ。レタスは緑黄色野菜に該当しないが、それでも昨日デパ地下で見かけたものは600円だった。



 度々足を運ぶJAの直売店でも驚くほど高値で並べられている。この時期はブロッコリーがありがたいわけだが、痩せ衰えた貧相なものが250円で売られている。過去の記憶ではブロッコリー豊作の年には一個だいたい100円あたりで、先日並べられていたようなものは、とても恥ずかしくて棚にも入れてもらえなかったはずだ。貧相といえば小松菜もそうだ。でも昨年の倍はする。元気なのはネギと大根ぐらいだ。白菜も年末に比べると倍以上の値段が付いていた。レジで「どうしてまたこんなに高いのさ」とオヤジに訊くと「さーて、ま、天気のせいでしょうな」という。10月の長雨と台風が大きく影響しているらしい。冷凍のブロッコリーという手もあるが、ほら、中国産だからと・・・躊躇う。この高値は春ごろまで続くという。春はまだまだ遠い。何とか確保して食してはいるが、いつもは冷蔵庫の中に野菜がワンサカ入っていたものが、今はサカってな案配で心許ない。

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