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 20代のころ、インスタントラーメンをよく食べた。貧しかったというのもあるが、どちらかというと好きだった。野菜を炒めてトッピングしたり、これと御飯さえあれば「よしよし」ってな具合だった。若いころというのは、立ち食いの富士そばをわざわざ電車を降りてまで帰りに寄ったりしたように、特別美味いものを食べたいなどと切に願うものではなかった。腹が一杯になれば何の問題があろうかってな調子だった。もちろんたまには歌舞伎町の「にいむら」で豚カツなどを食べることはあったにせよだ。



 食い物で多少贅沢をするようになったのはツアーで地方に頻繁に出かけるようになってからだったような気がする。ツアーというものはステージとホテルと空港、駅しかない。それは知らず知らずの内にストレスを抱えることになる。仕事そのものがストレスだというわけではない。移動、次の町、ステージ、ホテル、朝から移動、次の町という繰り返しで気分が窮屈なところに閉じこめられるのだ。それを食事で解放しようと考えるわけだ。どの程度の効果があったかは定かではないが、こういうことにかけてはとても熱心なメンバーもいた。ここに来たからにはこれを食べなきゃダメだという風に誘われてそこら中を歩き回ったこともある。昼食に三千円の天丼を食すという無茶ぶりに音を上げて付き合わなくなったけど。
 その土地によっての違いもあった。鹿児島の次が大阪ということがあった。どういうわけか2日連続で焼き肉屋に入った。肉質も値段もほとんど同じで、鹿児島の肉は2倍の量があった。北陸方面を回ったツアーは毎日打ち上げの宴会があった。4日か5日連続でテーブルに大きな舟盛りが並べられた。主催者が違うから仕方ないのだけど、何日も続くとその刺し身の大きな舟盛りを見るだけで「うげっ」となり、お茶漬けでいいのになどと思ったりした。旅先のその土地その土地で美味い物を頂いたはずだが、ほとんど覚えてはいない。

 心臓疾患のあと、塩分を控えるように厳命されて食生活は恐ろしく変わった。スーパーに行くと必ず包装の裏を見る。だいたい塩分量が明記されているから、それを参考に買う。近ごろは塩分控えめの塩まであるから驚きなのだ。食感は普通に塩だが、半分はカリウムで成り立っている。塩分を控えるのは動脈硬化を防ぐというか、そもそも固くなっているのだから元通りというわけには行かないが、これ以上の悪化を防ぐというようなことだ。さて、インスタントラーメンだ。何年ぶりかで食べてみた。懐かしくも美味いものだった。しかし、スープはとんでもない塩辛さで驚いた。まるで塩水を飲んでいるようなものだ。塩分量5グラムなどと書かれている。小さじ一杯の塩だ。警鐘が鳴る。若いころはこんなものを飲み干していたことになる。血管も若いから少々の事にはびくともしなかったらしい。
 栄養士に言わせれば、食餌療法をしている場合は羽目を外していい日などないという。いつも節制しているから今日ぐらいはというのはなく、ダメージは蓄積されるものだから要注意ってなことだ。これが難しい。ちょっとならいいかなどと思ってしまったりするのだ。再発すれば明日はない。食事でペースを逸脱した際には、何をやってんだ的な後悔があとから必ずやって来る。

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